行けたら行く

関西人が苦手なのに関西9年目になってしまった人のブログです

70代でも、自分を試せる人生にしたい

高齢化社会。うん、知ってる。今、日本が抱えている大きな問題なんだと思う。

でも、自分の老後なんて全然興味ない。バンドマンじゃないけど、長生きなんかしたくないと思ってる。

 

だけど、このおばあちゃんにひかれてしまうのは何でだろう。

 

30歳を迎えるとき、まわりに「できなくなること」が増えると強調された。「焼き肉は脂身が食べられなくなる」「生足は出したらだめ」「アイドルの夢はあきらめなきゃいけない」。

 

もちろん、私のまわりにもかっこいい先輩はたくさんいる。でも、先輩たちのような圧倒的な才能もなければ、壮絶な努力もできる気がしない。先輩たちの生き方を目指すことを想像しただけで、息切れしてしまう。

 

わくわくする年の取り方が何か、全く見えなかった。

 

そんな不安を救ってくれたのが、おばあちゃんの撮った写真だったのかもしれない。西本喜美子さん。SNSで有名になった熊本の自撮りおばあちゃんである。

 

ゴミ袋の中に入ったり、車にひかれてみたり。

奇抜な発想のこの写真が、写真塾の展示会で張り出されると、ツイッターで話題になり、ネットで爆発的に広まった。今や個展を開けば会場の動員観客数過去最多を更新、握手会には先が見えないほどの長蛇の列だ。会場の外を歩けば、アイドルかのように大きな歓声が上がる。

 

驚くのは、彼女がカメラを手にしたのが72歳になってからということだ。70代から始めた趣味が、爆発的ヒットを飛ばした。

 

自分に置き換えると、まだ自分の中に開花していない才能があるのかもしれない、と思いさえする。

 

こう考えるのは私だけではないようだ。喜美子さんのトークショーの参加者の多くは20・30代の女性だ。喜美子さんに送られる感想文には「あこがれの女性です」「こんな人生を私も送りたい」と続く。

 

年をとるということは、自分の可能性をゆるやかに、せばめていくことだと思っていた。だけど、そうじゃないのかもしれない。

 

西本さんの写真との向き合い方の根幹は、写真の先生で、息子の和民さんの教え方にある。

 

何事も「うまい・へた」はある。

だけど「いい・わるい」はない。

だから自信を持って好きに写真を撮ろう。

 

 

 

 

自分を縛っているのは、自分なのかも、と思った。客観的「いい」人生を生きなければ、と思う気持ちが可能性をせばめていたのかもしれない。

 

「いい」写真を目指していたら、ゴミ袋に入るというアイデアは思いつかなかっただろう。

 

実際に、西本さんがゴミ袋に入っている写真は「老人虐待だ」というクレームも入ったそうだ。それを受け、作品の横に「これは自分で撮影したものです」と注意書きをいれたという。

 

ほかにも、世の中には出していないが、入院中の夫の病室にあるカーテンで首を吊る、という作品もあったそうだ。しかもぐったりした表情で。そんなの不謹慎だ!とやめていたら、これから先の作品も生まれていなかっただろう。

 

もたれてもいい。痛いといわれてもいい。ハア?となってもいい。

いつまでもカルビを食べて、生足でミニスカはいて、夢を忘れないでいたい。自分の可能性を年齢を理由に閉じない。わくわくする年の取り方をしたい。